size:80mm×80mm×11mm 18ページ
<作品の説明>私たちが使うような文字(ひらがなや漢字、アルファベットなど)は持たないけれど、固有の表音記号(楔形文字や点字の類)を使う民族による「民話」の本。そんな設定で、ダルマレース糸を用いてタティングレースで四つ目綴じの本を作りました。典拠の方は布クロスと写真用プリント用紙が材料の普通の四つ目綴じです。目で見て、あるいは触ってみると、ある規則に則って読めるようになっています。レースがどんな規則で並んでいるか、いくつの目で構成されているか、そこに特徴はないか、そのあたりがヒントになっています。
お話だけ知りたい方は、『中国古典文学体系第42巻』の「閲微草堂筆記」の「四一 小人の話」をご覧ください。
わたしは中国民話の、誰それから聞いたんだけど…という、異界がすぐそばに馴染んでいる感じががとても好きなのですが、そういった雰囲気が強い和やかな話になっております。
この作品は平凡社様の許諾を得て制作しています。
<エピソード、制作時の事等>「民話」というもの関しては、文字におこされ書籍化した読み物、というより、口承や絵図によって伝達された物語、としてのイメージの方がわたしにとっては強いものでした。ですから、私たちが日々使うような文字に頼るものではないけれど、ある種の記号による伝達方法で記した「民話」の本を作れないか、そう思いまして、編んで文字を作る、ひいては、全部糸で本を作ることに致しました。
定住以前は野盗を兼業していた遊牧民だから、夜闇でも触って判別できる形状を用いていて…大きさは飼っている鳥獣に絡めて仲間のところまで運ばせられるくらいで…綿の糸を使う前は馬の毛とかで作っていたとかで…そんな話を考えながら作りました。本それ自体も、架空の民族の作ったものとして、楽しんでいただけると幸いです。
音の配列表の作成、原文の変換、変換したものを元にしたレース編み、編んだパーツの合体、綴じ、という工程を経ているのですが、作るのは非常に楽しい本でした。ただ、ご覧の通り、粗が目立つ本ですから、この形態を保ちつつ、今後進化させていきたいと思っています。
<自己紹介>製本会社勤務のまるみずぐみ幽霊組員です。
「民話」というテーマに大興奮し、ぜひ参加を??と製作にかかったものの、見事轟沈致しました。
レース編みによる新たな伝達手段の作成という試みはおもしろい。しかし作者はこの架空の民族について、どれだけ丁寧に検証したのだろうか。文字は持たないが、一方でタティングレースのような繊細な飾りを編むことのできる、しかも「触って判別」するため手先は滑らか──そういった文化は、いつ頃、どこで存在しえたのか。タティングレースを編むのは大変だっただろうが、それならばそれが物事を伝達する手段としてたいそう不経済なことも実感されたはず。それをさらに四つ目綴じの本という形にしたのはなぜなのか。あの分量なら、たとえば1枚になるよう編んで、持ち運びのときには折り畳む、としてもいいわけです。背景がはっきりしているようで実はものすごくぼんやりしている。そのため作品世界にうまく入り込めませんでした。説明を読まない方が素直に作品を楽しめたかもしれません。
出だしの「私たちが使うような文字……」の一文ですが、ここもいろいろと引っかかりました。楔形文字も点字も文字ですよねとか(文字は記号の一種ではありますが)、ひらがなとアルファベットと点字はいずれも表音文字なのでなぜ分けたのかなとか、あるいは楔形文字はともかく点字は現代日本でも使われているのに「私たちが使う」ものに含めてもらえないのかなとか。こうしたことからも、文字に対する理解が、なんというか、雑という印象を受けました。
作ってみたかった本なので。
設定が面白かったです!
レースの本はとても手が込んでいて素晴らしいけれど残念ながら「見せ方」をもっと工夫したらスゴク良くなると思った。
言葉をレースにするというもの。読める人にしか読めないというのが想像力をかきたてられて良いです。読めたらこの民族の言葉の言いまわしが楽しめたりしそう。