size:204mm×150mm×38mm 356ページ
<作品の説明>
釈迢空(国文学者・民俗学者の折口信夫)の短歌集(昭和10年?昭和15年によまれた)を改装しました。
年明け早々に能登半島で大きな地震がおき、重い気持ちでお正月を過ごしました。この先、現地で作られたものを買って使い続けることも必要と考え、コンクールに向けての題材と素材を探し、輪島で作られている杉皮を漉き込んだ能登仁行和紙が紙屋さんのオンラインショップで購入できたので、これを使って本を作ることに決めました。
いつもはテーマから中身を選択しますが、今回は使う素材を先に決めました。
題材に選んだ折口信夫は大阪生まれの学者ですが、能登に縁のある歌人です。能登の羽咋市にも墓があり、古本で歌集を購入し制作を開始しました。
杉皮紙は表紙、見返し、函の内側に使いました。表紙と函の和紙は、柿渋と顔料で染色加工していますが、見返しは加工せずそのまま使ったので、めくりながら素の紙を体感してください。函の外側は染めた絹地を使い、内側は有機的なデザインになるように和紙を継いで継ぎ紙を作って仕立て、背タイトルと表紙タイトルは元の本から切り出して活かしました。
『遠やまひこ』がよまれた時代背景には戦争や飢饉があり、歌人の心模様にも世相が反映されています。元の装幀に使われいたカバーは黒一色の紙に金の文字というシンプルなものでした。それが正解のような気がして、装幀を考えるのに苦心しました。
折口については知らないことの方が多いので、短歌から読み取れる作者の心情に沿うよう、静かな調子で全体を包むことを意識しました。
函の内側に埋め込んだ折口の肖像画像は、国会図書館の近代日本人の肖像の中で公開されているものです。著作権保護期間が満了、利用の申込不要、出典を記載することと明記されているのでそのようにしました。
最後に、いつも角背をかがる時に、背と小口の高低差が出ることが気になっていましたが、
2月に行われた、テクニカルレッスンで紹介された抜き綴じの技法は背の厚みがすっきりとおさまる方法でした。改装するために選んだ本も抜き綴じでかがられており、レッスンの学びが応用できたことが喜びです。
<エピソード、制作時の事等>
材料を準備し、短歌集を読み、作者の心情を包むように、とにかくきれいな1冊にしようと決めて少しずつ作りました。2月に久しぶりにまるみず組ででレッスンを受け、新しいかがりを学んだことが楽しく、その気持ちが制作に反映したと思います。
<自己紹介>
紙や布を染めることに興味があり、それを使い本の形にすることに取り組んでいます。
https://www.instagram.com/aimik31e/
材料選びが製作時のいりぐちだったところが、結果的に全体の装丁に調和感があって、おちついていて、雰囲気が好きです。
一つ一つ丁寧に心が込められているのを感じました。
心をこめて、細部まで丁ねいに作ってあり、感動しました。
祈りの心が本の形になっていると思いました。
ゆかりの場所に公開保存してほしい作品です。
箱の中面に写真を入れ込み、印刷とは異なる手法で美しい。
全ての素材の統一感が美しく、ていねいでこっていて工芸品のようです。
色が好き
改装本
丁寧なつくりと正確な技術が伝わってきました
本は工芸品なんだなと思いました
箱の中に書著の写真が貼っているのが面白かったからです
どこまでが経年で、どこからが改装なのか判別が難しいほど、新古が調和された美しい本だと思いました。こんな風な新しさで改装できることに、驚きと感動がありました。
色も質感もすてきでした。
しっかりした技術、素材の良さに心惹かれました。
個人的にも好きな色味、素材です。