088 Stillness (副題)西行さんとわたし

size:154mm×216mm×13mm 38ページ

<作品の説明>
 作品名の”Stillness “は、英和辞書によると「静けさ、沈黙、静止」という意味です。現代はデジタルテクノロジーとネットワークの普及で、動画と3Dによる表現が喧しい社会です。ややもすると絵画や写真などの静止表現が前近代的だったり付随的な印象を持たれる事も少なくありません。しかし静止表現の本質は、動画に対して動かないということにあるのではなく、一瞬の中に永遠を捉え留めることにあります。永遠を一瞬に換え、一瞬が永遠に換わります。だから必然的に静止する表現となるのです。そして、このことは視覚表現だけではなく、言語表現とくに短歌や俳句の世界にも言えるのではないでしょうか。目の前の自然や人の心の移り変わりの中に永遠普遍を感じて記す、それが短歌を詠むことである様な気がします。
 私は短歌を作ることは出来ませんが、情景を機会ごとにスマホで撮影した画像が、目の前の心をゆるがす一瞬を捉える気持ちで短歌を詠む姿勢とつながるのであれば、千百年前の歌人西行さんの歌と組合せてコラボレーション仕立てにしたらどうだろうと発想してみたのが、今回の作品作りの動機です。写真も短歌も一瞬を永遠に転化させるからこそ、千百年の時間を超えて繋がり合えたのではないかと、独りよがりな思いを持っています。
 肝心の製本についてですが、日本の古くからの文芸様式である短歌がテーマということで、和綴じ本として制作しました。一方、私の写真も載せるためグラフィック制作物としての存在感も出したいと考え、かなり厚手の和紙をインクジェットプリンターにかけて印刷しています。和綴じ本としては紙の厚さ的にかなりの負荷が生じることにもなるのは覚悟の上での制作でした。
 使用した和紙は、表紙「能登杉皮紙」、見返し「越中染紙」、本文紙「土佐雲模様」「伊勢和紙(とりのこ225μ)です。

<エピソード、制作時の事等>
制作時に手こずったのは、簡素ではありますが写真集的な存在感を演出したく、本文紙を和綴じ本としてはかなり厚めにしたために、綴じ穴を開けるのに相当のチカラを要して目打ちが垂直に通し切れず少々曲がってしまったことに尽きます。

<自己紹介>
製本を学び始めて10年以上経った様な気が…します。残念ながら10年に相応しい技術や知識が適わず、自分の不器用さと物覚えの悪さに悲嘆に暮れる毎日です。


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2 コメント

  1. 会場コメント

    タイトル通りのたたずまいが良い、紙が厚いのが和本としては惜しいが、その分写真がきれいですね。見返しの紙もきれい。

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  2. 無名

    会場で拝見しました。本文の厚みが心地よくとてもめくりやすい、読みやすい本だなと感じました。本文紙の種類が作品説明に描いてあり、とても助かります。

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