014 はなのすきなうし

size:204mm×165mm×14mm 86ページ

<作品の説明>
昭和49年発行第16版の改装本
<素材>ギャルドブランシュ:NTラシャ100Kgスノーホワイト/見返し:NTラシャ100Kgにペーパーナフキンを貼った/かがり糸:16/1、支持体:ホワイトレーン16/6
<選書理由>「はなのすきなうし」が「まきばのこるくのきのした」=「ふるさと」に帰るまでのお話と解釈した。
古い愛着ある本でカバーも無く、背のタイトルはちぎれて、表紙の周囲はボール紙が露出していたので心をこめて改装した。

<エピソード、制作時の事等>
<改装とは>
作業を始めると、
「この本を改装する目的は? 何を捨てて何を生かすか? どこまで自分らしさを入れ込むか?」
などの疑問が湧いて、本を前によく見て考える時間が必要でした。
今回は、
「元の本のあじわいをできるだけ大切にする」
「保存性よりも、すぐに手に取って読めることを優先する」
「改装を通じてこの本が好きという気持ちを表現する」
に絞って改装しました。
表紙の周囲がボロボロだったため元のあじわいを残す意味で、表紙絵を切るのは心苦しかったですが別丁扱いせずはめ込みました。
すぐ手に取れるようにケースには入れないことにしました。
また、楽しい気持ちに寄り添いたいので、手持ちの花柄のペーパーナフキンをNTラシャに貼り合わせて使用しました。
<困ったこと>
見返し用にペーパーナフキンを薄く剥いでNTラシャに貼り合わせる工程に一番苦労しました。
剥がせば穴が開き、貼り合わせると皺だらけ。材料がなくなる寸前に2枚を確保できてほっとしました。
<余談:改装の楽しみ>
1 改装した版は表紙に『岩波書店(現在は、「岩波の子どもの本」)』と表記されており、よく見ると「店」のフォントと配列が他の3文字と微妙に異なって見えます。昭和49(1974)年頃の手作業感あふれる暖かみに触れて、改装の楽しみ方が広がりました。
2 図書館の英語版と比べたところ、英語版の見返し原画には書いていない「チョコレート・キャラメル・ホットドッグ」の文字が日本版には追加されていました。初版の出た昭和29年頃は見世物「興行」の宣伝には必要だったのかしら、などと想像するのも楽しみです。
3 幼い頃の感想は、優しい牛さんのいるこんなお花畑に行きたいな、だけでした。大人になって再読すると、安心できる場所で好きなことができて、自分らしくあるがままにいられるのは簡単でなく、山ほどのエネルギーと努力と幸運が必要であると感じました。

<自己紹介>
4回目の出展です。基礎コースの時は「技術の習得」とか「新しい試み」とかに心を奪われていましたが、最近は紙と糸の感触を味わうのが楽しくて続けています。今年こそは、「のんびり楽しく作りたい」と早くから取り掛かったのですが、やはり期間いっぱいになりました。でも、だからこそ手製本は止められません。これからも本と楽しく遊びたいと思います。


スキル

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10 コメント

  1. 粕谷香織

    子供の頃の大切な本を持ち続けている事も素敵ですし、今のご自身の思いを織り込みながら新たな本に蘇らせるのも素敵です。製本の楽しみが作品と説明から伝わってきます。
    (葉書のお知らせが私のところに届いたのが昨日夕で会期を過ぎていました)投票は無効かもしれませんが、コメントが届くと嬉しいです。

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  2. 会場コメント

    改装をどこまでするか、紙選びがとても良かったです。

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  3. 会場コメント

    実は目に見えていないところにとても丁寧な作り方をしている。
    ご本人にお話しをきいて、とてもなるほど感がありました。

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  4. 会場コメント

    改装本ですが、元の本の持ち味をリスペクトしている感じがよいです。

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  5. 会場コメント

    これをプレゼントされたらうれしいだろうなと思いました。

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  6. 会場コメント

    改装本であるのにとても読みやすく出来上がっているところ。

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  7. 会場コメント

    ここに連れてきて下さった方の作品なので。この形で売っているのかと思いました。

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  8. 会場コメント

    しっかりした製本。素材の統一感があって素敵だなと思いました。

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  9. 会場コメント

    全部見て、最後に手にした本でしたが、シンプルな改装にみえて、本への愛が感じられました。

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  10. 会場コメント

    色あいと柄がかわいいです。

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