23 麗子さん

size:187mm×184mm×16mm 28ページ

<作品の説明>
「赤」から岸田劉生の「麗子像」を連想した。「麗子像」は不気味な印象ばかりで好きでは無いのに、いくつかの疑問が長い間心に引っかかっていた。そこでこの機会に、麗子自身の著書や他の書籍の情報と劉生関連の二つの展覧会の感想を文章にまとめて、絵葉書とともに冊子にした。
本文はNTラシャ100㎏に印刷し黒のマーメイド153㎏に貼った。見返しもマーメイド153㎏。絵葉書の厚みを吸収する目的でリボン背を見せて黄色のヘンプ糸(ユザワヤ市販品で太さなど詳細不明)で綴じた。
表紙は2mmボール紙に黒の市販裏打ち布を張った。スリップケースは重々しい印象を避けるため台紙と同じ素材で軽くし、スリットを入れて中身を覗き見る感じを出した。

<エピソード、制作時の事等>
岸田劉生や麗子関係の書籍情報と展覧会の感想を文章にまとめるのに時間がかかったが、長年の疑問に一区切りをつけられて嬉しかった。
家庭用プリンターで希望のサイズに印刷できる和紙素材が見つけられなかったのと、絵葉書も同じ形式で綴じたかったので、本文はNTラシャに印刷し、柔らかい味を出すために周囲をやすりで毛羽立たせて台紙に貼った。絵葉書は接着剤の種類を変えてもはがれてしまい、裏に紙やすりをかけて貼った。厚みが出てしまう折丁を綴じる方法として今回はリボン背を見せる綴じ方を採用したが、他にももっと良い方法あるのではないかと思う。
劉生の絵の力強く不気味な絵の味わいを反映したくて、黒、赤、黄の3色で表現した。今後も目的にふさわしい様々な綴じ方などの技術や接着材や紙など素材の知識をもっと身に着けたいと思っている。

<自己紹介>
美しいものを見て本を読んで旅に出るのが大好きです。頭の中にある曖昧なアイディアを、自分が今できる方法で具体化するのに苦労しました。実際に手を動かして試作品を一工程ずつ積み重ねていく途中で、苦しくなる時と思いを形にしていく楽しみの時間の繰り返しでした。今回は固い感じの作品ですが、次は無茶苦茶に爆発した感じの本が作れないかしらと思い始めました。大変だった日々をすでに忘れて沼にはまっています。


スキル

投稿日

9 コメント

  1. ひだい

    厚物を貼り込むのに充分な工夫がされていない作品、
    アルバム仕立ての理解が足りていない作品が散見されるなか、
    かがりの糸を太くするというシンプルな解決策が光っている。
    その黄色い糸、そして赤いリボンも、本文や箱の黒によく映えている。
    中身も充実しており、とても端正な作品だと思った。
    なぜ「重々しい印象を避け」たかったのかはわからなかったが、
    スリットから見る/見られるという演出もしゃれています。

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  2. 会場コメント

    題名どおりこわいです!クスッと笑えました。

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  3. 会場コメント

    つくりこまれ、しかも無二感

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  4. 会場コメント

    岸田劉生の世界が絶妙にぴったりと伝ってきました。

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  5. 会場コメント

    装丁だけで麗子像が浮かんできました。

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  6. 会場コメント

    黒と赤のバランスと箱から見えるタイトル

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  7. 会場コメント

    スリップからのぞく麗子さんの目のデザインと、調査した話が大変興味深かった。

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  8. 会場コメント

    ケース裏面のすき間からのぞく目力!思わず全ての頁を読み、麗子さんに会いに行きたくなりました!装丁だけでなく本文の内容がとても面白かったです。

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  9. 会場コメント

    既存の本では(内容)ではなく、作者の思いが内容・デザイン・製本のすべてに反映しているように感じたから。

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